木の和(なごみ)設計 一級建築士事務所

木とパッシブデザインで創る和みの空間

NPO法人九州森林ネットワークプレミアム研修会のご報告①

NPO法人九州森林ネットワークプレミアム研修会のご報告①

私も理事として活動するNPO法人九州森林ネットワークのプレミアム研修会5/18.19に参加してきました。
今回のテーマは『九州北部豪雨と森林管理』 私たちにとって身近で起こった災害、のの+設計にとっても、木材をお願いしている近隣地域ということで、

本当に胸が痛む九州北部豪雨災害、福岡県 朝倉、東峰村を訪ね、森林管理者の方々にお話を伺い、これからの森林管理の在り方など学んできました。

最初に尋ねたのが、朝倉の松末地域 赤谷川 流域 (私も昨年泥かきに行きましたが、被害が大きいと報道されていた松末小学校の上流部分)被害の大きかった地域です。

(下の写真)山肌が見え、川の両岸が削られているのを目の当たりにします。

朝倉の自伐林家の出井裕康さんに当時の状況を説明頂きました。

川沿いの自宅にいたところ、最初は石ころが転げる音を耳にし、音がしなくなった頃に、根っこのついた杉の木と大量の砂をふくんだ水が流れてたとのこと。

それからは、身動きを取ることができないまま、2日間家にとじこめられ、ヘリコプターで救助されたとのこと。川沿いの家で流され、被害にあわれた方々もあり、

あまりの被害の大きさに呆然としたが、地域住民で何度も話し合いを重ね、本当に少しづつだが前に進み始めたことを話していただけました。

今回の災害の特徴は、

①狭い地域に短時間の大量の雨が降ったこと(黒川地区のその日9時間の降雨量774mm/通常の7月1ヶ月雨量354mm)

②山地の表層崩壊が多発し、土砂の流出が多く出たこと
過去にない雨が一気に多量ふったことが大きいが、松末地区の山は、真砂土質のものも多く、湿った空気が山肌にあたり、雨をもたらし

その降り続く雨が谷に流れ、谷部分にも植えられていた杉の木も 土砂と共に根っこごと流されている。

③表層崩壊と渓岸浸食により、多量の砂だけでなく、多量の流木が発生し、人的、物的被害を拡大したこと。
■土砂 筑後川右岸流域(1100万m3 そのうち赤川流域は1/4)   ■流木 21万m3(その内 筑後川への流出は20%)

中山間地における日本で最大の災害となったと報告されました。

皆さんもニュースで、沢山の皮のはげた流木を目にされた事と思います。その映像を見ると、製材所で皮をはいだ木が流されたと

思われた方も多かったのではないでしょうか?実は、山にはえている生きている木がそのまま流され、流されているうちに、

木の皮がとれていった、その証拠に流木は根付きのの状態で横たわっています。

その流木の量21万m3がどのくらいかというと、今回の被害地域朝倉市と東峰村を灌漑区域とする朝倉森林組合の年間素材販売量は、

4.2万m3程度。ということから今回の流木の量は、数年分の素材が流木となったと言われています。

(参照元 福岡の暮らしと自治より 当NPO法人理事長 九州大学 農学部教授 佐藤宣子先生の記事から)

また筑後川まで流されたものは全体の20%で、残りは山中にある状態で、その流木を撤去するまでには、かなりの年月がかかるといわれています。

流木の特徴は、広葉樹は1割に満たず、根付きの杉、直径30センチ前後、平均長さが15m程度、被害にあった地域の人工林率は、朝倉氏旧杷木町90%

東峰村で85%と、全国平均の4割、九州平均の6割と極めて人工林率の高い地域であることが分かります。

今回の災害要因を、雨量、地質によるものとし、森林管理状態が良好だったことから、被害軽減につながったという意見、

尾根筋や急傾斜地、渓流沿いなどへの広葉樹配置の必要性、挿し木でなく実生苗への転換などの提言がされている等様々な議論がなかされているなか

拡大造林の半世紀を経ての今、林業の盛んだったこの地でのこの災害に、

調査にもとづく、自然科学的な知見と、新しい視点の森林計画が望まれていることをとても感じました。